バッカスの女神様はオトコを知らない
「ここに来る時に、倉庫の前を通ったのですが、ちょうど納品の樽を入れていましたけど」

「そんな事、おめぇにはかんけーねぇことだが?そこの小娘!」

ダニエルは体を斜めに傾け、デラシアをにらみつけた。

「小娘ではありません。私はシスター・ローズベリーといいます。
修道院で、薬草リキュールを担当しています」

そう言って、軽く頭を下げた。

「運んでいたオーク樽ですが、いくつか小さな傷があって、そこが腐っているように見えました」

「なんだとぉ。うちの責任者が全部、検品をしているんだがな」

ダニエルが机の前で、デラシアと向き合った。

デラシアの青灰色の瞳は揺るがない。

絶対的な自信をのぞかせた。

「樽からの試飲は、まだしていませんよね。
きっと船の貨物室が思ったより温度が高くなって、腐ってしまったのでしょうね」

デラシアが窓から見える船を指さした。

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