バッカスの女神様はオトコを知らない
木箱に酒が6本入っているので、相当に重いのを地下貯蔵庫から運ばねばならない。

「ローズベリー、さぼっていないで、早く来て!!花嫁さんが出てしまうわ」

黒のベールの修道女が、窓から叫んだ。

デラシアの身分は「志願者」である故、いつまでも下働きをする立場だ。

それに対して不満はない。

何しろ修道院以外の世界を知らないから。

ここにいれば、質素であるが衣食住は保証されているし、薬草リキュールをつくることは楽しい。

終生誓願をすれば、正式に黒のベールの修道女になるが、そのためには一度この修道院から出て、別の修道院に行かなければならない。

そこで2年の修練、さらに3年の有期誓願の期間が必要であり、教義や経典について多くを学ぶことになる。

そうなれば、ここで薬草リキュールをつくることができなくなる、イコール、酒が飲めなくなる。

・・・デラシアは首をブンブンふった。

それだけは困る!!
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