バッカスの女神様はオトコを知らない
<レガートの内情>

ダニエルが事務所に戻った時、マークスが驚きを隠せないと言ったように、声をあげた。

「なんですか?あの修道女?しかし、すごいですね」

「ああ、特異体質と言っていたな。
俺は昔、見世物で大食いの奴と賭けをしたことがあるんだ。
そいつもひょろひょろで痩せた男だったが、大男の何倍もの肉を平らげた。
全く、その時は賭けに負けて大損をしたが・・・」

ダニエルは苦笑いをして、葉巻に火をつけた。

「世の中は広い。変わった奴もいる」

「別件でロイヤルコンペの件ですが・・・どうしますか?」

マークスが話を変えた。

「そろそろ絞っていかんと・・・今回もワイナリーの奴が強敵だ」

ロイヤルコンペとは

王宮主催で行われる、醸造家が自慢の逸品を競うコンテスト。
優勝すれば、ロイヤルワラント、王室御用達の箔がつくし、高い金額で取引される。

何よりも知名度が上がり、他国からも引き合いが増え、ビッグビジネスのチャンスだ。

2年に一度開催されるが、歴史の長いワイン勢が手ごわい。

酒の完成度はもちろんだが、そのオリジナリティ、料理との相性、TPOに応じての供し方など、評価項目は多岐にわたる。

「うちのは居酒屋の安酒というイメージだったが、別の路線で高級品ブランドを立ち上げたい。
お貴族様、セレブ、王族なんかが一目おいて、飲むような酒だ」


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