バッカスの女神様はオトコを知らない
彼女の唯一の譲れない部分。

「はい、すぐお持ちします」

ローズベリーは立ち上がり、よっ、と声をかけて木箱を持ち上げた。

今日、礼拝堂の控室に、領主とその娘が来ているのだ。

コンコン

ローズベリーは、重い木箱を足元に置いてノックをした。

「ローズベリーです。お酒をお持ちしました」

「お入りなさい」

修道院長の返事があったので、改めて木箱を持ち上げて客室に入った。

まず、目に入ったのは、純白のウェディングドレス姿の花嫁。

部屋の中央で丸椅子に座り、その脇に院長先生が立っていた。

花嫁の父親は、窓辺にあるソファーに足を組んで座っている。

彼はこの地域一帯を管理する地主。

領主で貴族の称号を持ち、修道院はこの領主の庇護を代々受けてきた歴史がある。

「お嬢様の御結婚、おめでとうございます」

ローズベリーは木箱を絨毯の脇に置き、スカートをつまんで優雅にお辞儀をした。
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