バッカスの女神様はオトコを知らない
大きな火傷の跡があり、皮膚が赤くひきつれている。

親指の動きが、悪いように見えた。

酒の蒸留作業で、大やけどをおったものだろう。

アルコール度数が高くなると、扱いが危険になる。

「はい・・・ありがとうございます」

デラシアは軽く頭を下げて、鍵を受け取った。

「お待ちしておりました」

館から出て来たのは中年の女性だ。

糊がよくついているエプロンをつけ、メイドであることを示す黒い服を着ている。

「ジュリアと申します。通いですが、お世話申し上げます」

「別にお世話は必要ないですが・・・」

デラシアは引き気味に答えると、ダニエルがその様子を面白そうに

「朝食の準備と掃除をジュリアがやる。
アンタは、昼は王宮で働いて、夜はここで酒の勉強をしなくてはならないからな」

ダニエルは、扉の脇に置いてある木箱のふたを開けた。

その中にはギッシリ、酒の専門書が入っている。

「は・・・い」
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