バッカスの女神様はオトコを知らない
「ああ、ありがとうございます。まだ、子どもが小さいので、お金が・・・」

ジュリアが口ごもった。

「あなたの小さな天使が、健やかな日々をすごせますよう、お祈りをします。
それにお金も必要ですよね」

デラシアはジュリアの手を取った。

その手は、カサカサで荒れて傷だらけだ。

「修道院で使っている薬用クリームを使ってみてください。使いかけで失礼ですが」

スカートのポケットから、小さな蓋つきの素焼きの器を取り出し、ジュリアの手に握らせた。

「あと、御主人に伝えて欲しいのですが、できれば毎晩、お酒を・・・
料理とかお菓子に使って残ったものでよいのですが、小瓶でよいので、持ってきてもらいたいのです」

デラシアは躊躇したが、言葉をつなげた。


「その、祈りの時に必要なので・・・その費用は食材費として上乗せしてくれればよいです。」

本当は祈りの後の寝酒なのだが・・・

酒を王宮の厨房から勝手に持ち出す事はできないし、買う金もない。

休みの時に、修道院から持ってくるしかないか・・と思っていたのだから、ちょうどいい。

「はい、わかりました。主人には伝えておきます」

ジュリアは満面の笑みを浮かべた。
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