バッカスの女神様はオトコを知らない
<王宮の厨房>
次の日の朝、デラシアは白のブラウス、黒のスカート、髪は後ろでひとつに結んでいる。

生成りの綿のエプロンを手に持って、玄関ポーチでダニエルが来るのを待っていた。

「おはよう、お嬢ちゃんんん?」

ダニエルの帽子を脱ぐ手が止まり、デラシアを凝視している。

「シスターかぁ??」

「おはようございます。レガートさん」

ダニエルは腕組みをして前に立ち、検分するように上から下まで見た。

「何かオカシイですか?シスターでない恰好をしろとおっしゃったので」

不審げに返答するデラシアに、ダニエルは口を押え、笑いをこらえている。

「いやっ、ベールがないので、印象がちょっと違う。
学校の制服みたいで、普通に女学生?・・・」

「はぁあ?私、30才ですよ?そんな年齢じゃあないです」

デラシアは抗議するように、口を尖らした。

「ぐぇええ?30って、俺より年上なのかぁ!?」

今度は、ダニエルが一歩飛びのいた。

東洋の血がはいっている女は、若く見えるのか。

これは年齢詐称できるな・・・ダニエルは感心した。

「ダニエルさんって、いくつなのですか?」

「俺は28だけど」

「あああ・・私は35くらいだと思っていました。意外と若かったのですね」

表情に乏しいデラシアだったが、やっと驚きの表情が見えた。

ダニエルは帽子を深めにかぶり、納得がいかない表情をごまかした。

「まっ、貫禄があるということだ。で、シスター、王宮での名前をどうする?」

「デラシアでいいです。デラシア・ローズベリー」
< 36 / 74 >

この作品をシェア

pagetop