バッカスの女神様はオトコを知らない
「わかった。デラシアだな。王宮の使用人入り口まで案内をする。
ここから歩いて10分ぐらいだ」

「はい」

ダニエルが先に歩き出し、デラシアも後からついて行く。

王宮に近くなると、行きかう人も多くなってきた。

王宮の裏門に向かう道は、緩やかな昇り坂で、両脇にはたくさんの露店が並んで活気がある。

物売りや客引きの声、赤ん坊の泣き声、怒鳴り声、修道院の静寂とは真逆だ。

人混みの中でデラシアは、ダニエルの背中を追うので必死になった。

肉を焼く煙、脂っぽい匂いにスパイスの強い匂いが混じる。

麻袋に色とりどりの香辛料が積み上げられ、乾燥した枝や葉がつりさげられて売られている露店の前で、デラシアの足が止まった。

「おい、早く・・・どうした」

ダニエルが振り返った。

「すごいです。見たことの無い物ばかりで・・・」

デラシアの目は、数々の香辛料に釘付けになっている。

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