バッカスの女神様はオトコを知らない
ヘッドドレスの小花はオレンジフラワー、うなずく度にかすかに揺れる。

まだ、幼さを残している花嫁は、他国の王族に嫁ぐと聞いた。

「お嬢様、毎月、お腹が痛くなるようなら、湯たんぽでしっかり温めてくださいませ。
あと、カミツレとペパーミントのお茶も痛みを和らげますので、一緒に入れておきました」

デラシアの説明の間、修道院長は満足げに、テーブルの上に並んだ薬草リキュールの瓶を見ていた。

「これは体力回復にも、助けになりますし、よい眠りはお気持ちも健やかにします。
ぜひお続けになってくださいね」

花嫁は虚弱体質だったので、この女子修道院の薬局と付き合いは長い。

娘の体のこともあって、領主の寄付は手厚いものになっていた。

領主は、懐から懐中時計を取り出した。

「おお、時間だ。そろそろ出なくては」

「ローズベリー、ドレスの裾をお持ちして」

修道院長が素早く促した。

< 5 / 74 >

この作品をシェア

pagetop