バッカスの女神様はオトコを知らない
「食後酒、〆(しめ)もはちみつ酒ですが、リンデンのはちみつを使い、オークの実、ホップで少し苦味も感じる、ハーブ感強めの辛口にしました。

古来、はちみつは、滋養強壮にいいと言われ、子どもをつくるのによいとも」

ダニエルは笑いを誘うように、微笑んだ。

それは完璧な紳士の笑顔。

「ハネムーン。蜂蜜の一月と言われる由縁ですね。有名な話ですが」

気の利いた下ネタは、審査員たちの笑いを起こす。

特に女性陣の受けがいい。

ダニエルは手ごたえを感じていた。

「本日、お出しした酒は、修道院で造られています。
毎日祈りと讃美歌を聞いて熟成をするので、神の食べ物、「アンブロシア」シリーズと名付けています」

ほうっと、審査員から驚きなのか、声が漏れる。

「もうひとつ、修道院の秘伝の薬草リキュールをお楽しみください。
これは女性向けでして、薬効作用があるものです」

ダニエルは小さなグラスを掲げた。

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