バッカスの女神様はオトコを知らない
窓から入る光にカットされたガラスが乱反射して、琥珀色の液体が宝石のように輝く。

「これこそがオー・ド・ヴィ。命の水です。
ローマの皇帝、マルクス・アウレリウスの侍医、ガレノスがこう書いています。

「私たちを若返えらせ、心の苦しみを忘れさせる」と。
私の説明は、これにて終了です」

ダニエルはグラスを飲み干し、優雅にお辞儀をした。

審査会場を出ると、廊下でマークスが待っていた。

「マークス!審査員が驚いていたぞ!!」

二人はハイタッチの後、抱き合い全身で喜びを表していた。

デラシアは、その様子をカーテンの影に隠れるように見ていた。

「シスター!!そこに隠れていないで・・・」

ダニエルがそう言うと、両手を広げてカーテン越しにくるむように抱きしめた。

「シスター!!アンタのおかげだっ!!」

抱きしめられたデラシアの目に、ダニエルの手、あの火傷の跡が見えた。
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