バッカスの女神様はオトコを知らない
苦労して、命を削って・・・この人は掴もうとしている。
何を・・・?

「ああ、悪い。シスターにハグはだめかな」

ダニエルは気まずそうに、腕を離した。

「うまく・・・できて良かったです」

デラシアはカーテンに顔を隠し、うつむいて言った。

顔が赤くなっているのを、見られたくなかったからだ。

廊下の奥が騒がしくなり、多くの参加者が駆け寄った。

結果の紙が廊下に張り出されたのだ。

ダニエルはデラシアの腕をつかんで、駆け寄った。

1位には王冠の紋章。

ダニエルのはちみつ酒に、それは輝いていた。

修道院の薬草リキュールも特別賞を受賞した。

歴史があり、優れた薬効があるというユニークさが、審査員たちの評価につながったのだ。

ダニエルは放心したように天を仰ぎ、デラシアは顔を手で覆った。

バッカスの女神の微笑みを、二人は感じていた。

< 54 / 74 >

この作品をシェア

pagetop