バッカスの女神様はオトコを知らない
<王宮での出会い>

王宮の城下町は、祭りで盛り上がっている。

もうすぐ川の向こうで、花火が盛大に上がる。

街角では爆竹が鳴らされ、顔を赤や緑、青に塗りたくった青年たちが盛り上がっていた。

王宮に通じる大通りはいつも以上に、仮装した人たちでごった返している。

子どもたちはうさぎや猫の着ぐるみを着て、飴を手にはしゃいでいる。

騎士は、二本足で歩く馬と連れ立って歩き、お姫様とほうきを持った魔女が手をつないで歩いている。

デラシアは人混みを抜けて、ようやく王宮の使用人出入り門までたどりついた。

料理長は、妻と子どもと一緒に、王宮のレンガ壁の側で立っていた。

こどもは怪獣の恰好、その妻は魔女、料理長はモフモフの耳をつけ獣人の狩人になっている。

「お出かけするところなのですね」

デラシアが声をかけた。

「今までありがとうございました。お世話になりました」

「ああ、マークスから聞いている。よく働いてくれて、ありがとうよ」

料理長が、足元に絡みつく子どもをあやしながら答えた。

「ところで、デラシア、アンタは城の飲み会に行かないのか?」

デラシアは首を傾げた。

「飲み会って?」

料理長はニヤリと笑った。


< 58 / 74 >

この作品をシェア

pagetop