バッカスの女神様はオトコを知らない
花嫁が立ち上がると、衣擦れの音がする。

豪華なレースと織り模様が複雑に組み合わさっており、一目見て高級品とわかる。

デラシアはすぐに後ろに回り、ドレスの裾を持ち上げた。

かすかに聖堂の香の香りがする。

「お幸せに、お祈りをいたします」

デラシアは小さな声でささやくと、花嫁も固い表情でうなずいた。

遠ざかる花嫁の乗った高級車を見送りながら、デラシアは考えていた。

政略結婚らしい・・・と、誰かがささやいていた。

あの可憐な娘が、幸せになるといいけど・・・

結婚・・・自分はその場所に立つことはない。

れでは神は・・・私に何を望まれているのだろうか

思いにふけるが、速攻で現実に引き戻された。

「ローズベリー!!祭壇のろうそくの補充をっ!!」

礼拝堂の窓から、大声が聞こえる。

静寂、沈黙の場なのだが、案外騒がしい。

速足で礼拝堂に向かった。


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