バッカスの女神様はオトコを知らない
「私、結婚する前は、ブライダルのヘアメイクの仕事をしていたのよ」

そう言って、奥さんは手慣れたように、化粧を進めていく。

最後に香水を、まんべんなくスプレーした。

「この香りはなんですか?何かの花?すごくいい匂いですね」

デラシアは香りを吸い込んだ。

いつものハーブやスパイス系ではない。

「スズランよ。昔流行ったけど、花のフェアリーなら「あり」でしょう?」

酒の匂いがわからなくなるけど、まぁ、しかたがない。

デラシアは判断をした。

ハーフアップの髪には小花が散らされ、ドレスはしゃくやくの花のようで、薄い布を何重にも重ねられたている。

「靴はもちろんヒールよ。サイズが合うかしら?」

デラシアは足元を見た。

いつもの見慣れた、黒のぺったんこの靴。

奥さんが高めの銀のヒールを持ってきて、デラシアの足元に置いた。

「若い時、旦那とダンスをする時に履いた靴なの。足がきれいに見えるのよ」

おそるそそる足をつっこむと、すんなり入った。

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