バッカスの女神様はオトコを知らない
ダニエルは・・・どうなのだろうか?

あのキスの後、「間違えたっ!!」と叫んだ。

たくさんの女の人がいつも側にいるから、誰かと見間違えたのだろう。

それでも・・・デラシアは唇に指をやった。

「レガートさんって、女の人がいっぱいいますよね」

余計な事を言ってしまったと、デラシアは頭を振った。

「ああ、社長ね。金も権力も野心もあって、ついでに顔もいい。
普通に女がほっとかないでしょ。
でも、彼はまだ結婚する気がないみたいだけど」

「なぜでしょうか?」

つい、口をついて出てしまった。

「昔は相当ヤンチャして、危ない橋を渡って来た人だから。
何かあった時、家族が巻き添えになるかもしれないと思っているんじゃないかな。
今は堅気として、だいぶ落ち着いてきているけど」

彼の右手の火傷の跡、胸のドラゴンは苦しい時代の証。

「この着替えはジュリアに預けておくわ。ドレスは明日、返してくれればいいし」

「ありがとうございます」

デラシアはウエストを、右と左に交互にひねった。

少しでも酒が入る隙間を空けておきたい。

「素敵な出会いがあるように」

意味深に奥さんが言うと、デラシアはスカートをつまんで宮廷風のお辞儀をした。

「ありがとうございます。いっぱいおいしいお酒を飲んできます」

くふふふ・・奥さんが笑いをこらえている間に、デラシアは小走りで外に出た。

早くしないと、飲み放題タイムが終わってしまうではないか。
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