バッカスの女神様はオトコを知らない
「ええ、ないと言われて、このワインを薦められました」

デラシアは瓶のエチケットをダニエルに見えるように向けた。

「フラスカーティ、なるほどね。これはいいワインだ。古代ローマ時代から造られている」

ダニエルもしゃがみ込み、デラシアと向き合った。

「法王のワイン・・シスターらしいけど・・・この姿はシスターらしくないな」

ダニエルの視線が、瓶ではなく、瓶を抱えるデラシアの胸の谷間をみつめている。

デラシアは急いでショールで隠した。

強行突破しかないか・・・

酒瓶を胸にしっかり抱きしめ、様子を伺った。

「このドレスは料理長の奥様が・・・貸してくれて。
今日は色々なお酒が飲めるから、行ったほうがいいって。
その・・こんなチャンスはないし、私には買うお金もないので・・・」

言えば言うほど、しどろもどろで支離滅裂になっていく。

< 69 / 74 >

この作品をシェア

pagetop