バッカスの女神様はオトコを知らない
<ワインのキスの結末>

コンコン

勝手口でノックの音がする。

ジュリアが、着替えを持って来てくれたのかもしれない。

デラシアは急いでドアを開けると・・・

ダニエルがワインの瓶と、ショールを手に立っていた。

「忘れ物だ。それに俺は今日、酒を飲んでいない」

「あ・・りがとう・・・ございます」

デラシアが、ワインとショールを受け取り、そのままドアを閉めようとすると閉まらない。

ダニエルの靴先が、きっちり邪魔をしている。

「俺は・・神と三角関係になるつもりはない」

ダニエルは断言して、後ろ手にドアを閉めた。

「三角関係って・・?」

ダニエルの刺すような視線に、デラシアが一歩、後ずさりをした。

「アンタが誓願すれば・・神様と結婚する。だからその前に話をつけにきた」

ダニエルは片膝をついて、右手をデラシアに差し伸べた。

「さっきのキスは本気だ。遊びの粘膜接触ではない」

そう言うと、ダニエルは顔をしかめた。

適切な表現かどうか・・・少し間が空いた。

「アンタは俺の女神だと思う。
だから俺の側にいて、これからもずっと見守ってほしい」

ダニエルは頭を垂れたまま、視線を落とし、歯をくいしばった。

神と勝負をつけるのだ。

それとも最後の審判を問うのか。

「神ではなく、俺と結婚をしてほしい。YESなら、この手を取ってくれ」


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