バッカスの女神様はオトコを知らない
1日に5回祈り、その間に薬草園でハーブの世話をして、薬局に訪れた人の相談にのり、薬を処方する。

このまま修道院で生涯を過ごすだろう・・・静かで変わらない日々を送る。

デラシア本人もそう思っていたが、30才になったある日、修道院長に呼ばれた。

「ローズベリー、薬草リキュールのレシピを買いたいという実業家がいるのですが」

院長は一呼吸置いた。

「今後の事を考えると、薬草リキュールの製造を外部に委託するのが良いと考えています」

院長は少しうつむき、言うのをためらっているように見えたが

「領主様がこれ以上、援助してくださるとは思えないのです。
これでお嬢様が嫁いだし、こちらとの関わりも薄くなるでしょう」

「はい」

デラシアも小さくうなずいた。

この修道院の運営は、領主の寄付で成り立っている。

修道院の裏手には領主一族の墓があり、洗礼式や葬式も行ってきた。

院長は天井を見上げた。
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