【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
「こちらこそ不束者ですが、よろしくお願いします」
「やめてくだせえ姐さん! 俺たちに頭下げるなんて!」
私が頭を下げると、笹部さんは慌てる。
「でも、これからお世話になりますし」
「敬語もいりません! 俺たち兄貴から、姐さんのこと任されてるんです。姐さんのことは、俺たちがお守りします!」
「姐さんは楽にしてればいいっす!」
その言葉通り、本当に良くしてもらえた。
まず驚いたことは、家事は組員たちで当番制だったこと。料理、洗濯、掃除などなど分担して真面目にこなしていた。
桜花組は住み込みの組員が過半数だから、みんなで家事をやっているのだそう。
働き者の方々ばかりで素敵だなと思うけれど、みんな私には何一つやらせてくれなかった。
「姐さんは休んでてください!」
「……ええ」
私は部屋で一人、溜息をつく。
私には何も手伝わせてくれないなんて。
流石にやってもらってばかりでは申し訳ないと思ったのだけれど、「姐さんを働かせたら俺たちが兄貴に叱られます」って言われちゃうし……。
仕事も辞めたから専業主婦になるつもりだったのに、今この状況は専業主婦ですらない。