【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。

第九話 裏切り



 ガクガクと震えが止まらず、まともに喋れない私のことを嘲笑うような笑みを浮かべ、彪冴くんは銃口を突き付ける。

 この拳銃が本物であることは知っている。
 他の二人の男たちも私から銃口を逸らさない。

 彪冴くんは銃を向けたまま袖のボタンを外して腕まくりした。
 その腕には梅模様の刺青が彫られている。


「え……」
「改めて自己紹介するよ。俺は梅堂彪冴。極道・梅堂組組長の息子だ」


 彪冴くんが極道!?
 梅堂組だなんて……。

 そういえば、彪冴くんは夏でも薄手の長袖を着ていた。
 大学時代何気なくそのことを尋ねたら、子どもの頃に負った酷い火傷をした痕が残っているから人には見せられないと言っていた。

 でも本当は刺青を隠すためだったんだ。


「ジェシカの苗字が吉野って聞いた時はまさかと思ったよ。極道(おれら)の世界で吉野といえば、あの桜花組だからさ。カマかけてみれば、ビンゴだったわけだ」
「あの電話はわざとだったの?」


 吉野カズトという社長がいるって。
 あれは和仁さんのことを探るためだったのね……!

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