【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。


「そうだ。半信半疑だったけど、マジで吉野和仁と結婚してたんだな」
「さっきの電話は……」
「意外と声真似上手くね? 電話越しの声ならワンチャンいけるかな〜って。結構似てただろ?」


 あの電話も嘘……!

 冷静になっていれば声が違うことに気づけたのかもしれない。
 でも咄嗟にSOSの電話がかかってきて、私がどうにかしなきゃって必死で……冷静になれていなかった。

 私ったら、本当にバカだわ……。

 いや、それよりも気になることがある。


「……本当に彪冴くんなの?」
「何が?」
「だって彪冴くんは人を騙すようなことする人じゃない。いつも明るくて誰にでも優しい人だったじゃない!」
「あーー……あれはカタギ用のツラだから」


 彪冴くんはめんどくさそうな表情を浮かべる。


「俺兄貴が二人いるんだけどさぁ。三男だからか親父は俺に全く興味がないんだよね。跡取りにする気なんか一ミリもないんだよ。だから敢えてカタギのフリして大学行って会社にも勤めてんだ」
「どういうこと?」
「極道に必要なものは? 金? 権力? 圧倒的な力? 俺はそのどれでもない、独自の道を選んだ。俺が重要視してんのは“情報”だよ」


 そう言って勝ち誇ったように笑う。

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