【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
ペロリと舌舐めずりをする彪冴くんが気持ち悪い。
こんな人知らない。
「……っ、やめて……」
逃げようとするも、すぐに二人の男に拘束されてしまった。
恐怖と嫌悪感に震えて全身が強張る。
いや、こわい、助けて……!!
「和仁さん……っ!! 和仁さん!!」
「マジでジェシカってなんでアイツと結婚したんだよ?」
「あなたには関係ないわ!」
「じゃあ知ってるか? 吉野和仁には忘れられねぇ女がいるってこと」
え……?
忘れられない女性……?
答えられないでいる私に、ハッと小馬鹿にしたように笑う。
「もしかしてその顔、知らなかったのかよ?」
「……」
「嘘じゃないぜ。俺の情報網は確かだからな。あの男にはかつて愛した女がいた。お前は所詮その女の代わりなんだよ!!」
その時、私の脳裏に浮かんだのは書斎で見た写真だった。
「……だから何?」
仮に本当だったとしても、それがなんだというの?
「他の人から和仁さんの話なんて聞きたくないし、私は和仁さんのことを信じてる」
「へぇ……」