【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
「仮にあなたが言うことが本当だったとしても、今は私だけを見て愛してくれているわ」
和仁さんは誰かの代わりにするような人じゃない。
代わりを求めるのならば、誰のことも愛さないなんて言わない。
本気で私のことを大事に思ってくれている。
それだけは譲れない。
「じゃあ、アイツの目の前でブチ犯したらどんなツラするのかなぁ」
「!?」
「お前のこと愛してんなら、自分の嫁が他の男に犯されてたらどう思うんだろうなぁ!?」
「いや……」
ああ、本当に私の知る彪冴くんはどこにもいないんだ。
この人は、本気で人を傷つけることができてしまう人なのね……。
恐怖と嫌悪感よりも勝ったのは、絶望感だった。
大切な友人を失ったという絶望感――。
「っ、和仁さんっ!!」
その時、パァン! という銃声が響いた。
一瞬でも死を覚悟した。
「うぐっ」
その直後、彪冴くんは呻き声をあげて銃を落とすその手には血が滴っている。
息を呑む間もなく二発の銃声が響き、私を拘束していた男たちも外れた。
急所は外しているようだけど、足を撃たれて起き上がれないようだ。