【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
私を強く抱きしめ、和仁さんは彪冴くんが発砲するより先に発砲した。
目を瞑る一瞬の隙さえなかった。
的確に彪冴くんの足元を撃ち、彪冴くんはその場に倒れ込む。
「ぐはっ」
彪冴くんの背後から峰さんたち桜花組の組員が現れ、あっという間に彪冴くんを拘束した。
千原さん、笹部さんも来ていて倒れていた梅堂組の組員を連れて行く。
「兄貴、あとは俺たちにお任せを」
「ああ、その前に……」
ツカツカと彪冴くんの方へ近づくと、その顔面を思いきり殴った。
たった一発で気絶寸前になり血を流す彪冴くんの胸倉を掴み、鬼の形相で脅す。
「二度とその汚いツラをジェシカに晒すな」
「ぐ……っ、この鬼が……」
その言葉を最後に、気を失った。
そのまま峰さんが気絶した彪冴くんを担ぎ上げて連行した。
私は和仁さんの背中に向かって呼びかけ、駆け寄る。
「和仁さん……!」
「ジェシカ!!」
振り返った和仁さんに鬼のようなオーラはなかった。
優しい和仁さんに戻っていて、ぎゅうっと強く抱きしめてくれる。
「ジェシカ、怪我はないか……?」
「はい……っ」