【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
千原さんはそう言っていた。
桜花組の功績は日の目を浴びることはない。
それでも彼らは人知れず戦っている。
それが誰かを守ることになるのだと信じて。
「……誰にも感謝されずにむしろ怖がられることもあるでしょう? それでもいいの?」
そう尋ねると、皆が口を揃えてこう答えた。
「いいんすよ。こんな俺らでも桜花組にいれば役に立てることもあるんだって教えてもらったんすから」
「兄貴と出会ってなかったら、きっと向こう側の人間になってた」
「桜花組にいられるだけで充分なんです」
それを聞いて、やっぱり桜花組は優しくて素敵な人たちばかりだと思った。
私が嫁いだ家は温かい家だった。
あんなに恐ろしいことを経験しても、こうして私が立っていられるのは皆が支えてくれるから。
何より和仁さんがずっと傍にいてくれた。忙しくてもすぐに帰って来てくれて、どんな時も私を優先してくれた。
だから今は、心の傷は癒えつつある。
私は縁側から中庭を眺めながら、彪冴くんにもらったサボテンを見つめる。
「そのサボテン、捨てないのか?」
「和仁さん」
和仁さんは私の隣に座る。