【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
ちなみに私は英会話教室で講師をしていたが、結婚を機に退職した。
流石に極道の妻になります、とは言えなかった。
「え……つまり、私ってただのニート……?」
それはショックかもしれない……。
和仁さんから「何かあれば、これを好きに使ってくれ」ってブラックカードを渡されたけど、流石に使う気にはなれないし。
和仁さんとは当然のように寝室は別。いつも組の仕事で忙しそうにしているし、ほとんど顔を合わせることがない。
「……私、何のためにこの家に来たのかしら」
わかってる、これは形だけの結婚だから。
和仁さんは私に何も望んでいない。私はただのお飾りの妻だ。
いや、落ち込んでる場合じゃないわ、ジェシカ。これは私が決めた道なんだもの!
私には私のできることを探せばいいだけ。そう気持ちを引き締め直した。
* * *
翌日、私は屋敷の中にある広々とした庭にいた。
テニスコートくらいの広さはある庭なのに、何も植えられていないどころか雑草だらけなことが気になった。
「姐さん?」
「何してるんですかい?」
千原さんと笹部さんが通りかかって尋ねた。