【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。


 何故か一瞬美桜の顔が浮かんだことが自分でも謎だった。


「ところで和仁、例の裏カジノの件だが……」
「ああ」


 この頃桜花組は、満咲の命である裏カジノを調べていた。
 イカサマにイカサマを重ねて客から大金を巻き上げている。

 それも最初は順調に勝たせて良い思いをさせてから、勝負に出て大金をベットし出したところから一気に地獄へ叩き落すという悪どいことをしていた。


「信士さん、その裏カジノは染井一家が担当すべき事件(ヤマ)だったはずですよ」
美咲(みさき)さん」


 現れたのは桜花組と長年争う宿敵・染井一家組長の娘、染井美咲だった。
 その隣には彼女の護衛を務める鬼頭義徳が控えている。

 鬼頭は従順な男で常に染井美咲に付き従っているが、相当の実力者だ。
 俺の顔に傷を付けたのも、気絶させられそうになったのも奴ただ一人だった。


「裏カジノがある場所は染井のシマでもあります。ウチが取り締まるのが道理でしょう?」
「はい、美咲お嬢さん」
「……おい信士、聞いてないぞ」
「あはっ。そーいえばそうだったな! すまん、忘れてた!」
「貴様……」


 信士は優秀なことには変わりなく、頭も相当キレるがいい加減なところもある。

 桜花と染井を管理する立場にあるくせに、こうしたブッキングは度々あった。


「いっそのこと桜花と染井で手を組んだらどうだ?」

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