【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
* * *
裏カジノのヤマがなくなったからと言って暇になるわけではない。
涼しい顔をして組使いの荒い信士は、代わりに別のヤマを持ってきた。
未成年への違法ドラッグの売買が行われているという漫画喫茶の摘発だった。
ドラッグの噂はあるが出入りする少年少女は口を割らず警察側で思うような証拠が掴めず、うちに回ってきたということだった。
「見たところは普通の漫喫だね」
俺は峰と共に身分を隠し、普通の客を装って例の漫喫を訪れた。
この漫喫は通常よりも料金が安価で中高生が多く訪れるらしい。
確かに料金表を見れば破格の安さだった。
「これは……まともに営業できてるのか怪しむ安さだな」
「別のところでボロ儲けしてるってことだろ」
俺はこういう奴らが大嫌いだ。
まだ未熟な未成年を甘い蜜で誘い、薬漬けにして溺れさせる。私利私欲のために関係のない子どもを巻き込む。
「……絶対潰すぞ、峰」
「OK、ボス」
「変な言い方はやめろ」
しばらく客のフリをして探っていたが、それらしき動きは見られない。
小一時間程経った頃、漫画を取りに行くフリをして見回っていたら、見知った人物が目に飛び込んできた。
「!?」
あそこにいるのは……美桜!?
黒髪セミロングの横顔は、正しく美桜だった。友達と思われる同じセーラー服を着た女子と一緒にいる。
俺はバレないように距離を取りつつ、二人の会話が聞こえる位置で盗み聞きする。