【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
「美桜、やっぱりあたし……」
「大丈夫、私がついてる。絶対守るから」
なんで美桜が?
ここで何をしてるんだ。
とにかくここは危険だ、一刻も早くここから出さねば――。
「きゃあああっ!」
甲高い悲鳴が響いた。
「このクソガキ、何してやがる!」
「離してっ!!」
「こっちに来い!」
美桜の腕を掴み上げる男の顔面に一発食らわせてやった。
「ぅぐっ」
軽くストレートを決めただけだが、男はそのまま伸びた。
「和くんっ!?」
「逃げろ!」
騒ぎを起こしたことで、あっという間に他の奴らにもバレてしまった。
「お前は……吉野和仁!?」
「桜花組の次期組長がなんでここに……っ」
「チッ」
こっそり証拠を掴むはずが思いきり暴れる羽目になったが、この際徹底的にやってやる。
「峰!!」
「わかってるよ。全く、やっぱりこっそりなんて無理だったか」
正面から突破するのが桜花らしいとでも言いたいのだろう。
外で待たせていた舎弟たちも待ってましたとばかりに乗り込んできた。
「ここはお前たちに任せる」
とりあえず美桜とその友人を逃がさないといけない。
「こっちだ」
「和くん、どうして?」
「説明は後だ」