【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
「お花を植えてみようと思って」
「花ですか」
「このお家に足りないものは何かしらって考えた時、お花があったらもっと明るく華やかになるんじゃないかと思ったの。桜花組なんてお花の名前なのに、どこにもお花がなかったから」
「へー!」
「お義父様にも許可をいただいたから、今日からガーデニングをするの」
「いいっすねぇ。姐さん、ガーデニングが趣味なんすね」
「いえ、やったことないわ」
「「えっ」」
「今日から始めるの」
何事も始めてみるものだと、マムから教わった。初めてのことに挑戦してみるのも悪くないわ。
雑草を取り除くことだけで一日かかってしまったけれど、千原さんと笹部さんも手伝ってくれて何とか終わった。
改めてこんなに広々とした立派な庭なのに、何もないことが寂しく思えた。
ここに何を植えよう?
そう考えるだけで心が弾む。
とりあえず花屋さんでいくつかお花を買ったので、黄色いガーベラの一輪挿しを和仁さんのベッドの隣にあるサイドテーブルに飾った。
和仁さんが疲れて帰って来た時、ガーベラが和ませてくれたらいいなと思って。
「ただいま」
「お帰りなさい」