【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
* * *
ドラッグの売人たちは全員逮捕され、事件は解決した。
俺の傷は数日もすれば良くなっていた。
どちらかと言えば鬼頭の拳を受け止めた腕の方がまだ少し痛むくらいだ。
やはり鬼頭は一筋縄ではいかない男だ。
ある日、俺宛に一通の手紙が届いた。
名前はなく、ピンク色で桜模様の可愛らしい封筒だった。
何故かニヤニヤと見つめる舎弟たちを殴り、封を切る。
一枚だけ便箋が入っており、一言だけこう書かれていた。
「○月×日△時頃、桜の木の下で待っています」
名前はなくとも美桜からだとわかった。
俺は言われた日にち、時刻にあの桜の下に向かった。
そこには木にもたれかかって物憂げな表情を浮かべる美桜がいた。
俺に気づくと美桜はパッと表情を明るくさせた。
「和くん! よかった、来てくれたんだね」
美桜と会うのはあの日以来だ。
「怪我は大丈夫?」
「あれくらい大したことない」
「よかった……あの、改めて助けてくれてありがとうございました」
美桜はぺこりと頭を下げる。
「あの時のお礼が言いたくて。それから、ちゃんと話さないといけないって思ったの」
美桜はポツリポツリと話し始めた。
あの日、漫喫にいたのは一緒にいた友人が例のドラッグを使用していることを知ったからだった。