【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
「お姉ちゃんは優しいけど、ちょっと過保護なんだよね。子どもの頃お姉ちゃんの目の前で倒れたことがあって、それからずっと過保護なんだ。もう今は元気なのに」
いつまでも子ども扱いされることに拗ねていた美桜は、自分一人でも大丈夫だと見せたかったのだろう。
「でもあんなことになっちゃって、和くんが助けてくれなかったらどうなってたか……やっぱり私ってまだまだ子どもなんだよね」
「確かにガキだな。裏世界のことを何もわかってない」
「バカなことしたってわかってる! 反省もしてるよ。……でも、私だって染井の娘だもん」
「どうしてそこまで染井にこだわる?」
俺はなりたくてなったわけじゃない。
生まれた時から敷かれたレールの上を進むことを義務付けられていた。
血生臭い世界なのに女の美桜がどうしてそこまでこだわるのか、理解できなかった。
「だって、私にとっては正義のヒーローだもん!」
正義のヒーロー? 極道なのに?
「立場の弱い人、困ってる人を助けるために汚れ仕事をするって誰にでもできることじゃないと思うの。仁義を重んじ、筋を通す。私はすごくカッコいいと思う!」
真っ直ぐな瞳でカッコいいと言い切る美桜に驚いた。
そんな風に考えたことなどなかったから。
桜花も染井も犯罪は犯さない。法に縛られず、法を犯さないギリギリのラインで己の使命を果たしている。
それぞれのやり方で。