【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
* * *
「一緒に写真を撮らないか!」
俺たちの高校の卒業式の日だった。
急に信士は突拍子もないことを言い出す。
「別に構わんが」
写真は嫌いだが卒業式くらい信士の好きにさせようと思った。
「よし、義徳と美咲さんも入ってくれ」
「は?」
何を言い出すのだ、この男は。
「いいじゃないか、今日くらい」
「なんで染井と……!」
「フン、こちらから願い下げだな」
だが、一緒に来ていた美桜がこんなことを言い出した。
「私も見たいな!」
「美桜、何を言い出すの?」
美咲も流石の鬼頭も眉根を寄せる。
「だってお姉ちゃんと義徳くんの制服姿見られるのも今日が最後だし、たまにはいいじゃない」
「でも……」
「信士さん、私も写ってもいいですか?」
「もちろんだよ」
「ありがとうございます! ねぇ、お姉ちゃんも一緒に撮ろうよ!」
「……仕方ないわね、美桜がそんなに言うなら。義徳もいい?」
「美桜お嬢さんのお望みならば」
「やったあ! ありがとう!」
この二人が了承するとは、美桜に甘いというのは本当のようだな。
信士はかなり満足げに笑っており、満咲家の使用人をすぐに呼んだ。
信士は中央に陣取ると、俺と鬼頭の肩に腕を回す。逃がさないぞとでも言いたげに。
美咲は鬼頭の隣に立ち、その隣で美桜が姉の腕に絡まってピースしていた。