【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。


 現像した写真には、満面の笑みの美桜が写っていた。

 よっぽど嬉しかったのだろう。


「ねぇ和くん、二人でも撮りたい」


 帰ろうという時、小声で美桜に囁かれた。
 他の面子は先に歩き始めており、俺たちには気づいていない。


「お願い! 今日だけでいいから」
「……わかった」


 まあ今日くらいはいいだろう。
 なるべく写真は残さない方がいいと思い、今までは断ってきた。そもそも俺が写真が苦手というのもあるが。

 だけど、美桜があんなに喜ぶのなら一枚くらいは良しとするか。

 俺たちは誰もいない校庭の桜の木の下で写真を撮った。
 やはり美桜はとても嬉しそうに笑っていた。


「ありがとう、和くん!」


 美桜の笑顔は癒される。
 無邪気に笑っている姿を見ると、どんなに疲れていても疲れが吹き飛ぶ。
 心穏やかな気持ちになれた。

 この時間がいつまでも続けばいいと思った。

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