【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。


 美桜の通夜と葬儀はしめやかに行われた。
 穏やかに微笑む美桜の遺影を前に参列している組員たち、美桜の友人たちは皆悲しみ、涙を流している。
 まだたったの十八歳だった。

 葬儀が執り行われる中、俺は葬儀場の外で写真を眺めていた。
 俺は染井から通夜も葬儀の参列も拒否された。墓の場所も教えられず、永遠に美桜を弔うことは許されない。

 俺の卒業式の時に撮った唯一の二人での写真。
 俺があんなことを言わなければ、美桜は死なずに済んだ。

 今頃無事に高校を卒業できていたかもしれない。
 友人たちと今も楽しそうに笑っていたのかもしれない。

“人殺し!!”

 泣きながら人殺しと俺を罵る美咲の言葉が頭から離れない。
 外からでも美咲の泣き声は聞こえていた。

 何度も何度も愛する妹の名前を叫び、悲しみに打ちひしがれていた。
 あんなに堂々としていた彼女は、やつれて痩せ細って見えた。

 せめて迎えに行けばよかった。俺のせいで……本当に俺が美桜を殺したようなものだ。

 ポタリと写真に雫が落ちる。


「うっ、美桜……っ」


 しゃがみ込んで一人涙を流し続ける。
 悔やんでも悔やんでも悔やみ切れない。

 どんなに望んでも美桜には二度と会えない。
 もう二度と――。

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