【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。


 桜龍の勢いは増してゆき、たった一年で関東を制圧する程のゾクとなっていた。
 ただ歯向かってくるやつらを片っ端から片付け、仲間になりたいと言ったやつらを受け入れていただけだが、かなりの規模の組織となっていた。

 全く皮肉なものだ。
 あんなに敷かれたレールの上は嫌だと思っていながら、結局やっていることは変わらない。

 所詮俺は裏世界でしか生きられないということなのだろう。


「若! 組長から連絡があった」
「なんだと?」


 ある日峰から連絡を受け、父が俺のことを連れ戻そうとしていることを知った。
 俺はとっくに勘当されたと思っていたのに、どういうことだ?

 今更戻るつもりなんかないし、どの面下げて帰るのだと思った。
 だが今度は母から直接連絡があった。


「実はお父さん、癌が見つかったの。今は入院していて……だからお願い、和仁。帰って来てちょうだい」


 まさか、あの父に癌が?
 半信半疑だったがそれを聞いて無視はできず、俺は舎弟たちを引き連れ一年半ぶりに実家へ帰った。


「……帰ったか」


 一年半ぶりの父は、少し痩せたように見えた。
 ステージⅡと診断されて手術は成功しているが、再発防止のため放射線治療を行っているらしい。


「随分と暴れ回っているようだな」
「……別に」
「和仁、戻って来い」
「!」
「お前の連れて来たやつらも桜花組で引き取ろう」

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