【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。


 それでも俺を若頭として受け入れてくれるのか。


『桜花組の組員はみんな家族って信念、素敵だよね』


 俺はその家族を見捨てたのに。


『和くんって口にはしないけど、桜花組のことすごく大事にしてるよね。きっとそれがみんなにも伝わってるから、みんな和くんを慕うんじゃないかな』


 俺はそんなにできた人間じゃない。


『和くんの大切な家族の一人に、いつか私もなれたらいいな……なんて』


 いつだったか、美桜はそんなことを言っていた。
 照れ臭そうに頬を染める美桜に対し、同じく照れ臭かった俺は「どうだろうな」と曖昧にしか返せなかった。
 でも本音は、本気で思っていたんだ。

 いつの日か美桜と家族になれる日がきたらいいと。
 夢物語のまま儚く散ってしまったが。


「美桜……守れなくてすまない」


 どうしようもない自分にできることが、桜花組(かぞく)を守ることならば。
 今度こそ自分の役割を全うしたい。

 美桜が誇りに思っていた極道の仕事、桜花組次期組長としての役目を果たしたい。

 だが、もう二度と誰のことも愛さない。
 大切な人を失うことになるのなら、最初からいらない。
 そう決めていた。


 ――ジェシカ、君に出会うまでは。

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