【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
周囲には他のお客さんもいるし、峰さんも雅さんもいるんだった……。
「あっ……」
「若、血相変えて飛び出してきたんですよ。あと五分で始まるところだったのに」
「す、すみません! 峰さんもっ」
「いいんですよ、組長が何とかしてくれます。それよりおめでとうございます」
「ええ、おめでとうジェシカ」
「あ、ありがとうございます」
「雅、ありがとう。すまなかった」
「全然いいわよ。ちゃあんと安全運転で来たんだから!」
「ふふ、本当にありがとうございました。雅さん」
雅さんがついていてくれたから助かった。
一人ではどうしたらいいかわからなかったから。
それから自宅に戻り、改めてお義父様とお義母様にも報告した。
「ついに跡取りが生まれるか!」
「まあ! おめでとう、二人とも!」
二人とも大いに喜んでくれた。
その日は組を挙げてお祝いの席を設けてくれた。まだ妊娠がわかっただけで安定期にも入っていないのだけど、それだけみんなが喜んでくれているのだと思うと嬉しい。
「おめでとうございます兄貴、姐さん!」
「今日は宴だ〜〜!!」
「お前たち、あまり羽目を外すなよ。それから言っておくことがある」
そう言って和仁さんはテーブルの上に大量の本を積み上げた。そのどれもが妊娠・出産に関する本だった。
和仁さん、いつの間に買ったのかしら?