【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。


「いいか、お前たち。これらの本を全部読んで頭に叩き込め」
「えっ……全部っすか?」
「そうだ、妊娠・出産がどういうものかしっかりと理解し、いつでも万全の態勢でジェシカをサポートするんだ」
「は、はいっ!」


 慌ててみんな積まれた本を手に取って読み始める。


「兄貴! 全然わかんねぇっす!」
「死ぬ気で理解しろ」
「ヒイィっ!」


 和仁さんったら……。


「ふふっ、浮かれてますねぇ」


 少し離れたところで峰さんはニコニコしながら見つめていた。


「浮かれてるんですか?」
「浮かれてますよ。死んでも表情には出さないつもりらしいけど、バレバレです」


 流石は峰さん、幼馴染なだけあるわ。


「……本当に和仁は変わった。姐さんのおかげです」
「私の……?」
「姐さんのおかげであいつは生きる理由ができたんです。これからも和仁をよろしくお願いします」


 峰さんは優しく微笑み、私に向かって深々と頭を下げてくれた。


「峰! 何してる、お前も読め」
「はいはい」
「私も読みます!」


 こうやってみんなで騒ぎながら笑い合っているのが、とても幸せな時間だと感じる。
 こんな時間がいつまでも続くといいな。

 そしてこの輪の中にお腹の子が入るのかと思うと、もっと幸せな気持ちになれた。

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