【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。

第十三話 鏡花水月



 妊娠が発覚して五週目。
 古くから付き合いがあるという和仁さんが産まれたという産院に通うことが決まり、予定日は三月だと言われた。
 時期によっては桜が咲き始める頃に産まれるかもしれない。

 エコー写真で胎嚢を見た時は感動で泣きそうになった。
 赤ちゃんは確かに私の中で生きているんだ。

 和仁さんはほぼ毎回病院に付き添ってくれる。
 帰りもなるべく早く帰宅してくれるようになった。


「ジェシカ、体調はどうだ?」
「大丈夫です。まだつわりの症状もあまりないので平気です」
「無理はするなよ」
「はい」


 フォト婚は安定期に入ってからマタニティ姿で撮ることになった。
 こんな機会なかなかないもの、せっかくなら赤ちゃんも一緒に写真を撮りたい。

 雅さんが提携しているマタニティドレスショップに連絡してくれることに。


「ジェシカさーん」
「蘭さん!」


 そして今日は蘭さんとお茶会だ。
 蘭さんは女の子を出産したばかり。ベビーベッドですやすやと眠る姿がとても愛くるしい。

 流石は満咲家というべきか、とても大きく広々としたベビーベッドでなんと天蓋付き。
 まるでお姫様が寝かされているようだ。


八重(やえ)ちゃん、かわい〜〜」
「うちの人が既に親バカ全開なのよ。育休取ってくれたのは有難いけどね」


 ふふ、親バカ全開の信士さん、想像できるわ。

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