【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。


「ジェシカさん、予定日三月だっけ? 予定通りなら八重と同い年ね」
「あ、そうですね」
「そうなったら楽しみだわ」
「本当に!」


 蘭さんは妊娠中のことを色々教えてくれた。
 つわりが酷い時でも食べられるものとか、運動方法とか。身近に先輩ママがいるというのはとても心強い。


「そういえば美咲さんも最近お子さんが産まれたそうよ」
「美咲さんって……」
「染井一家の。美咲さんは義徳さんと結婚したの。義徳さんが婿入りしてね」
「そうだったんですか」


 美咲さんは、今でも和仁さんのこと許せないのかな……。

 一度お会いしてみたいなぁという気持ちはあるけど、美咲さんは多分そんな風に思ってないわよね。
 二組の溝はきっと深い。私なんかが想像できないような根深いものがあるのだと思う。

 それでもいつかは仲直りできる日がきたらいいな。
 美桜さんが望んだように。


「そういえば、蘭さんと信士さんの馴れ初め聞きたいです」
「えー、私たちの?」
「どちらから告白というかプロポーズされたんですか?」
「私よ」
「そうなんですか!?」


 蘭さんからなんて、すごく意外!


「実はうちの華道会で事件が起きたことがあってね」


 事件というのは、盗難だったそうだ。

< 155 / 173 >

この作品をシェア

pagetop