【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
花を生けるための花瓶がなくなっていたのだ。これはただの花瓶ではなく、展覧会のために特別に用意された一千万はくだらないという大変高価なものだった。
すぐに警察に届出をして捜査を依頼した結果、花瓶は蘭さんのロッカーから発見された。
蘭さんにとっては全く身に覚えのないことだった。
だけど犯人と疑われ、警察に連行されそうになった時に一人の人物が声をあげた。
「私が犯人ではあり得ない、ってはっきり言ってくれたの。論理的な推理と捜査で犯人を特定してくれて、私の疑いは晴れたわ」
「その人が信士さんだったんですか?」
「そうよ」
信士さんはまだ新米刑事ながら、冴えた頭脳で見事に真犯人を特定した。
ちなみに犯人は展覧会に出展予定で、そこそこ人気の華道家だったらしい。
メインとなる生け花を蘭さんに奪われた逆恨みだったとのこと。
「だけどそんなことがどうでも良くなるくらい、鮮やかに私を助けてくれた彼を好きになってしまって、その場でプロポーズしたの」
「その場で!? 初対面ですよね!?」
「私、華道もだけど直感を信じるタイプだから」
それにしてもすごいわ、蘭さん……。
「だけど仕事を優先したいから今は結婚する気はないって断られちゃって。だから言ったの、絶対私と結婚したいって言わせてみせるって」
「蘭さん、カッコいい……!」