【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。


 お父さんはずっと罪悪感を抱えていたのだと思う。
 お父さんに対して全く文句がないわけではないけど、私を引き取って育ててくれたことには感謝しているから。

 孫の顔を見せて親孝行できたらいいなと思う。

 和仁さんと一緒にマムのお墓参りにも行った。
 結婚と懐妊の報告をして、きっと喜んでくれていると思う。


「母が生きていたら絶対和仁さんのこと気に入ったと思いますよ」
「そうか?」
「ジャパニーズマフィア! しかもイケメン! って騒いでたと思いますよ」
「君のお母さんらしいな」


 本当はマムにも会ってもらいたかったし、生まれてくる赤ちゃんを抱っこしてもらいたかった。
 それはできないけど、きっと天国から見守ってくれているはず。

 マムの言っていたように、私は私の人生に誇りを持っている。
 生まれてくるこの子にも、そんな風に言ってあげられる母親でありたい。

 早く会いたいな――。





 妊娠八週目に差し掛かった頃。
 病院から帰宅するとお義父様に呼ばれた。


「二人とも、少しいいか」


 何かあったのかしらと思いながら、お義父様の部屋にお邪魔する。


「このタイミングで悪いが、和仁にしばらく九州へ行ってもらいたい」
「九州?」
「向こうで面倒なゴタゴタがあるようでな。九州の傘下から応援要請があった」


 和仁さんは眉根を寄せながら尋ねた。

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