【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
お父さんはずっと罪悪感を抱えていたのだと思う。
お父さんに対して全く文句がないわけではないけど、私を引き取って育ててくれたことには感謝しているから。
孫の顔を見せて親孝行できたらいいなと思う。
和仁さんと一緒にマムのお墓参りにも行った。
結婚と懐妊の報告をして、きっと喜んでくれていると思う。
「母が生きていたら絶対和仁さんのこと気に入ったと思いますよ」
「そうか?」
「ジャパニーズマフィア! しかもイケメン! って騒いでたと思いますよ」
「君のお母さんらしいな」
本当はマムにも会ってもらいたかったし、生まれてくる赤ちゃんを抱っこしてもらいたかった。
それはできないけど、きっと天国から見守ってくれているはず。
マムの言っていたように、私は私の人生に誇りを持っている。
生まれてくるこの子にも、そんな風に言ってあげられる母親でありたい。
早く会いたいな――。
*
妊娠八週目に差し掛かった頃。
病院から帰宅するとお義父様に呼ばれた。
「二人とも、少しいいか」
何かあったのかしらと思いながら、お義父様の部屋にお邪魔する。
「このタイミングで悪いが、和仁にしばらく九州へ行ってもらいたい」
「九州?」
「向こうで面倒なゴタゴタがあるようでな。九州の傘下から応援要請があった」
和仁さんは眉根を寄せながら尋ねた。