【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。


 本当はすごく心細い。だけど強くならなきゃ。

 これから母親になるんだもの――……。

 だけど、和仁さんが九州に行ってしまった直後からつわりがピークに達していた。


「うえっ、ううっ」


 何度もトイレに行っては吐いてしまっている。


「うう、気持ち悪い……」


 大丈夫なんて言って送り出したのになぁ……。
 和仁さんがいなくなった途端、こんなに酷くなるなんて……。
 赤ちゃんがパパが恋しいって言ってるのかしら。

 フラフラしながらベッドの中に入る。
 布団に潜ってまるまりながら、ぐすっとべそをかく。


「ママもパパが恋しいよ……」


 それから体調は悪くなる一方だった。
 夜中にガバッと起き上がり、枕元に置いてあるスポーツドリンクを飲む。


「!!」


 だけど飲んだばかりのスポーツドリンクをすぐに吐いてしまう。


「うえっ、……っ」


 これなら飲めそうと思って買ってきてもらったスポドリでもダメ……水も飲めないし何も食べてないのに吐き気が止まらない……。


「うう……」


 千原さんたちが毎日様子を見に来てくれるけど、何も飲み食いできないし気持ち悪いから横になるしかない。
 蘭さんがつわりでも食べられるものを教えてくれたけど、私の口には合わなかった。

 ベッドに戻ってお腹をさすりながら横になる。
 でも気持ち悪くて眠れない。

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