【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
「ごめんなさい……」
「謝るのはこっちよ。気づいてあげられなくてごめんなさい。そんなにつわりが酷くなっていたのね」
「和仁さんが行く前までは平気だったんですけど……」
あっ! 赤ちゃん!
「赤ちゃんは無事なんですか!?」
ガバッと起き上がろうとする私をお義母様が止める。
「内診はこれからだけど、恐らく大丈夫だろうって」
「そう、ですか……」
良かった……。
それを聞いて安心して、涙腺が緩み出す。
赤ちゃんに何かあったら……考えるだけで恐ろしい。
すると、病室の外からドタドタドタという慌ただしい足音が聞こえてくる。
ガラ! と勢いよく病室の扉が開き、息を切らして汗をかいている和仁さんが現れる。
着ているスーツもシャツも赤く汚れていた。
「ジェシカ!!」
「和仁さん……っ」
「和仁! あなた九州じゃ」
「朝一の飛行機で帰ってきた」
まだ息が乱れたまま私の両手を握りしめ、心配そうに見つめる和仁さん。
「ジェシカ、大丈夫か?」
「……っ」
和仁さんの顔を見た瞬間、ぼろっと涙が溢れる。
「和仁さ……っ、あいたかった……っ」
「ジェシカ……」
子どもみたいに泣きじゃくる私を優しく抱きしめてくれる。
しばらく泣き続ける私に寄り添いながら、和仁さんはお義母様に尋ねた。
「お袋、ジェシカの容態は?」