【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
満咲家の別邸は明治時代の洋館を思わせるレトロな造りで、そのまま結婚式場として使えそうなくらい雰囲気がある。
幸いにしてお天気にも恵まれ、自然の陽光が暖かく照らしてくれる。
お庭も広々としていて素敵だし、美しい花々の中で撮影できて本当に幸せ。
何より結婚式ではずっと仏頂面だった和仁さんの優しい笑顔が見られて嬉しい。
「今回の花はね、鏡花水月をテーマにしているの」
蘭さんがそう説明してくれた。
「鏡花水月とは鏡に映った花、水に映った月。どちらも手に取ることはできないけど、とても美しいでしょ? そういう澄んだ心の美しさみたいなものをテーマにしたの」
「素敵です!」
「ジェシカさんにピッタリだなと思って」
「え、私ですか……?」
「確かにその通りだ」
えっ、和仁さん!?
「そうね、ジェシカっぽいわ」
雅さんまで!?
なんだかそう言われると気恥ずかしい……。
でも素敵だな、鏡花水月。
そうだ……!
「赤ちゃんの名前、鏡花水月から取って水月ちゃんはどうでしょう!?」
「えっ……普通そっちから取るか?」
「あら、だったら鏡花ちゃん?」
「女の子なら鏡花の方がいいんじゃないか。まあ顔を見たら変わるかもしれないが」
その時、私のお腹の中で動いたのがわかった。
「……あっ! 今蹴りました!」
「本当か!?」
「もしかして鏡花ちゃんが気に入ったのかも!」
お腹の中で順調に大きくなってくれている。
どうか無事に産まれてきてくれますように。
あなたに会えるのをパパもママも楽しみにしてるからね、鏡花ちゃん――。