【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。

エピローグ



 私が吉野家に嫁いで五度目の春を迎えた。
 桜はほとんど咲き終わり、緑色がチラチラと見えている。

 うん、今日も良いお天気。
 絶好の行楽日和だわ。


「ジェシカ、どうかしたか?」
「いえ、そろそろ桜も終わりだなぁって見てただけです」
「この辺で弁当を食べないか?」
「まま、おなかすいた〜」
「お腹空いた? ママが作ったおにぎり食べる?」
「たべる」


 和仁さんに抱っこされていた鏡花ちゃんは、ストンと降りると近くにあったベンチの方に駆け寄る。
「ここすわる」と言うと、和仁さんが抱き上げてベンチに座らせてあげた。

 私も隣に座り、ウェットティッシュで小さなおててを拭いてからおにぎりを渡す。


「はい鏡花ちゃん、シャケおにぎりよ」
「いただきます」
「いただきますできて偉いわね〜」


 両手でおにぎりを持ってはむ、と食べる鏡花ちゃん。
 ああ、なんてかわいいの。
 ほっぺたにご飯つぶついてるところですら天使だわ。


「鏡花、ついてる」


 私がうっとりしている間に和仁さんがご飯つぶを取ってくれた。


「ぱぱ、じーじとばーばは?」
「後から来るよ」
「あとっていつ?」
「夜かな」
「もおよる?」
「まだ昼」


 お義父様とお義母様はどうしても外せない用事があって、後から合流することになっている。
 せっかくの家族みんなでの旅行だから、鏡花ちゃんも待ち遠しいのね。

 うちの子、本当にかわいい……。

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