【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
この旅行で泊まる旅館は、お義父様が贔屓にしているという老舗の高級旅館「はるみ」だ。
私ですら聞いたことのある、一度は泊まってみたい旅館ナンバーワン。
部屋に露天風呂がついているそうで、とても楽しみ。
「じーじ! ばーば!」
お昼寝から目が覚めた鏡花ちゃんは、おじいちゃんとおばあちゃんを見つけると駆け寄っていった。
「おおっ、鏡花!」
「鏡花ちゃん、お待たせ」
お二人とも目に入れても痛くない程かわいがってくれている。
お義父様は和仁さんには厳しかったみたいだけど、孫娘はかわいいのか甘々だ。
「ごめんなぁ、鏡花。じーじのこと待っててくれたのか」
「うん」
「そうか、そうか!」
お義父様はすっかり元気だ。
自分は長くないと言っていたけれど、今は鏡花が嫁入りするまで死ぬわけにはいかん! と言っている。
「……散々跡取りは男でないといかんとか言っていたくせに、今じゃジジ馬鹿だ」
「いいじゃない」
積極的に孫の面倒を見てくれるのでとても有難く思っている。
「ままー」
「なあに鏡花ちゃん?」
「きょうか、じーじとばーばといっしょにねる」
「えっ」
「お風呂も入ろうな、鏡花! じーじが背中を流してやるぞぉ」
「きょうかもながす」
「鏡花が流してくれるのかぁ!」
お義父様はとても上機嫌。
お義父様は最近腰の調子が良くないと言っていたのに、大丈夫かしら?
「大丈夫よ、何かあれば私がついてるから」