【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
和仁さんと一緒に食事をするようになり、多少なりコミュニケーションが増えたことで距離が縮まったように思う。
もちろん相変わらず和仁さんは口数は少ないけれど、私の話はいつも聞いてくれる。それが嬉しい。
「ただいま」
「お帰りなさい!」
こうやって出迎えられるだけでも幸せだ。
「今日はみんなで餃子を包んだんですよ!」
「餃子か」
「はい! 和仁さんが好きだと伺ったので!」
「……あいつらそんなことを言ってるのか」
少々呆れている和仁さんはスーツを脱ぎ、シュルリとネクタイを緩める。
そんな仕草一つにまたときめいてしまう。
和仁さんのスーツを受け取りながら、うっとりしてしまう私。
「……」
「? どうかしましたか?」
「……君は本当に変わっているな」
「え?」
ボソッと呟かれた言葉は私の耳には届いていなかった。
とにかく私の結婚生活は想像以上に充実していた。
和仁さんは今日もカッコいいし、約束を守ってご飯はほぼ毎日一緒に食べてくれる。
政略結婚がこんなに充実してていいのかしら?